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「パスちょっと浮かそうか?」課題と疑問が山積みの火の鳥NIPPON。#石川真佑 選手が風穴をあけられるか?打開策はいかに。

【女子】ワールドカップ2019第2戦ロシア、石川真佑選手が健闘するもフルセットの末敗れる

ワールドカップ第1戦目が「課題」なら2戦目は「疑問」の残る試合だった。

ロシアは高い。高いとはいえ、なにもワールドカップ直前に急に身長が伸びたわけではなく、日本はどこの国と戦っても大抵は「高い相手」と戦っていかなければならない。

相変わらず解説陣もロシアの高さを誇張して、試合が始まる前から「言っておくけど高さに分があるからね。」と伏線を張るところから始まり、日本が高い相手をどう打破するかの解説は少ない。

ドミニカ戦も、第4セット終盤にコートサイドリポーターの大山加奈さん(@kanakanabun)が、石井選手と古賀選手のポジションを変更していたことを言わなければ、なぜ第4セットのマッチアップがうまくいったのか気付かなかったのではないだろうか。

きっと韓国戦は「永遠のライバル」と戦うことになるだろう。

解説陣はさておき、まだ2戦目が終わったばかりで、中田JAPANの進化を見るには早計だが、この2戦の中田JAPANの戦いを振り返ってみる。

目次

蓋を開けてみたらレフトの負担は今まで以上

まず冷静にならなければならないのは、全日本女子はどの大会も1試合目の序盤だけは「おっ!?変わった!?」と期待させるチームだということ。

この「おっ!?」があるから、どうしても期待のハードルが上がってしまうし、それに応えてくれない場合「やっぱり女子バレーはつまらんな。」と思ってしまうようになる。楽しくバレーを観るためにも過度な期待は厳禁である。

今回の初戦ドミニカとの戦いも1セット目こそバックアタックやミドルを多用し、「おっ!」と思わせてくれたが、試合後のインタビューで佐藤選手本人も語ったように、やはり困るとレフト一辺倒になってしまった。

佐藤美弥

出典:FIVB

ドミニカ戦、古賀選手へのトスがチーム全体の約41%。
チーム全体で179本のスパイクの内、74本が古賀選手に上がっている。

バックアタックも含まれているため、全てがレフトポジションからのスパイクではないとはいえ、初戦で古賀選手が74本のスパイクを打つのはいくらなんでも偏りすぎだろう。あれでは会場で観ているファンも、テレビの前で観ているファンも「古賀決まらないやん。」と見えてきてしまうのも仕方がない。(ドミニカ戦、古賀選手の決定率は35%)

ドミニカ戦で長内選手と共に2枚替えで投入された宮下選手は、今度はライトの長内選手に偏ってしまった。
宮下選手は途中から出てきて流れを変えるタイプのセッターではないので、佐藤選手を中心に回すなら、宮下選手を活かすためにも、どこかの試合で宮下選手をスタートで、という形がベストだろう。

ドミニカ戦勝利後のインタビューで中田監督が佐藤選手を称賛したことから、ロシア戦の佐藤選手の配球にも注目されたが、ロシア戦もやはりレフトに偏り始めてしまった。

ロシア戦、162本中102本は石井、石川選手。ミドルの本数は全体20%に満たない。アウトサイドヒッターの決定率は石井選手が39%(打数58本・決定23本)、石川選手が44%(打数44本・決定19本)、新鍋選手34%(打数27本・決定9本)。

ミドルは荒木選手が8得点(スパイク7点、ブロック1点)、ドミニカ戦で奮闘した奥村選手はロシア戦は4得点のみ。4得点のうち2得点はブロックでのポイントだった。

強いサーブにレセプションが崩される場面や、ディグがセッターに返らないのも一因ではある。一因ではあるが、ドミニカよりも強力なサーブを打ってくるロシアが相手なわけだから、試合が始まる前からドミニカ戦以上にレセプションが崩されるのは予想できたはずだ。

レセプションやチャンスボールが崩されるのは前提でのコンビネーションの練習もしてきているはずなので、佐藤選手のこれからの組み立てに注目したい。

“チーム”としての団結力はどこへ

ベンチワークにも疑問が残る。
ロシア戦の1,2セット目、奥村選手が決まらないときは芥川選手もいたはずだし、新鍋選手が狙われ崩れ始めたときには鍋谷選手のオプションもあったはずだ。

選手たちを支えているスタッフは中田監督だけではない。
アクバシュコーチが全日本のチームから離れた今、中田監督が何かを相談したり、中田監督にアドバイスをできるスタッフはいないのだろうか。

「チームとして戦っている」と選手や監督も様々なメディアで口を揃えて言っていた割には、どうも風通しの悪い感じがしてしまう。

古賀選手が74本のスパイクを打ったドミニカ戦に至っては、テレビの前で観ているファンでさえ、古賀選手への負担が気がかりだった。

火の鳥NIPPON中田久美監督

出典:FIVB

今大会は選手を25名の登録できる上に、試合の24時間前に選手を登録できるのだから、今回登録されている15名で回せないのなら他のオプションがいくらでもある。なにも日本だけ15名にこだわる必要はなかったのではないか。

中田監督も就任3年目。東京五輪を来年に控え、今までのように「セッターにボールが返らないから」という言い訳は許されない。佐藤選手や宮下選手、今回選ばれなかった田代選手や冨永選手に対してもあまりにも失礼だ。

中田監督、岩坂キャプテン、そして選手たちを支えるスタッフ全員をファンは応援しているし、これからの火の鳥NIPPONの団結力にも注目したい。

これからも“なんとなく”早く見えるバレーを突き詰めるのか

レフトへの配球の偏りよりも気になるのがセットアップを含めたパスの低さだ。

第1戦のドミニカ戦の終盤、競った場面で中田監督が「1本目のパス、浮かそうか」と言っている場面が放送された。
やはり意図的にレセプションを低くして、「ワンフレームバレー」と呼ばれている“なんとなく”早く見えるバレーを目指していたのが伺える。

【女子】ワールドカップ2019第2戦ロシア、石川真佑選手が健闘するもフルセットの末敗れる

出典:FIVB

“なんとなく”早く見えるバレーは中田JAPANの“ぶれないコンセプト”のひとつだが、パスの軌道が低いことでセッターだけではなく、スパイカーもバタバタしている場面がとにかく多い。

一見ファインプレーに見えるプレイも、日本の場合は「ただバタバタしてるだけ」ということも少なくない。強いチームというのは、的確にコースに入り、余裕を持って助走をし、ブロックの枚数を把握して、レシーバーのいない場所に打つ。そのため、パッと見の派手さはなかったりするものだ。

ドタバタしているラリー中も、小幡選手がスパイカーに準備の声をかけている場面や、石川選手がバックアタックの準備をしてる場面も何度もあったが、俯瞰で観ている方も「バタバタしていてそれどころじゃない!」と感じてしまう程のドタバタっぷり。

ロシアの選手が身長も大きく落ち着いて見えることと相まって、ネットを隔てた日本のコートだけがバタバタしているように見えてしまう。

変わらぬ「低い」=「早い」の勘違い

ロシア戦で攻撃が通らなくなった古賀選手や石井選手も、トスが“早い”ではなく“低い”ことで、本来の高さやパワーが活きず、コースも限られてしまっていた。

手を伸ばせばネットから手が出る身長の選手相手に、バタバタと“低いトス”を配球しても「ん?なに?どうしたどうした」と言わんばかりに簡単にブロックされてしまうのは、以前から再三言われてきていたことだ。(ロシア戦の被ブロック数はなんと17本)

古賀紗理那

出典:FIVB

セッターからのトスが低いだけではなく、1本目のパスに余裕がないため、スパイカーが十分な助走動作がとれず、打点が低くなり、必然的にプッシュやフェイントが増え、ブロッカーにも捕まってしまう。

「それならパスの速度に合わせてスパイカーが早く助走に入ればいいじゃないか」というのが中田JAPANの“なんとなく”早く見えるバレーのコンセプトなのだが、「テンポ」の概念がズレたままのため、あの観てる側をヤキモキさせる「低いトス=なんとなく早いバレー=打ち切れないバレー」になってしまった。

先述した通り、手を出しただけでネットから手が出るような相手(ブロックのステップも早く大きい)に、日本のスパイカーが十分な助走を取れず、スパイカーが自身の到達点に達しないスパイクを打ったところで、スパイカーが打ち出すよりも先に、相手のブロッカーがスパイカーの打点に到達してしまう。

「パスちょっと浮かそうか?」課題と疑問が山積みの火の鳥NIPPON。#石川真佑 選手が風穴をあけられるか?打開策はいかに。

速いセットを打ち切れないのはセッターからのトスの精度やスパイカーの力量、セッターとスパイカーのコンビネーションだけではなく、まずは1本目のパス(助走)の段階。

観戦中「ダメだっ!またフェイント!またプッシュかよっ!」とヤキモキしがらバレー観戦をしている方は、1本目のパスとスパイカーの助走動作にも注目して観てもらうと楽しめるはずだ。(日本チームだけではなく、相手チームが1本目のパスをどうしてるか等)

しかし、テンポに関しても「“久美さん”に言われたから」ではなく、コート内やベンチから「こうしよう!こうした方がいい!それは違う!」という話が出てもいい気がしてしまう。
恐らく韓国のように比較的世界の中では小柄な相手には、ますます「低いバレー」を展開しようとするだろう。石川選手はファーストテンポの概念を理解した上でプレイしているので、ぜひともそこは・・・なんとか・・・。
打ち切れないスパイクにヤキモキしている方は、ぜひ「ファースト・テンポは “はやい攻撃” なのか!?」を参考になさってみてください。「ちょっと何言ってるか・・・」となるはずですが「あぁ!なんとなくわかった!」と新しい視点でバレーボールを楽しめるようになるはずです。

新しいボールへの対応にも注目

また、今大会からボールが変わり、強いサーブが有利になったと言われている。

MIKASAは日本のメーカーで、全日本チームは諸外国のチームより多少早い段階から使用していたはずだ。

切り札を石川真佑選手となりえるのか

出典:FIVB

今後、海外選手の強いサーブで今まで以上にAパスが返らない場面も増えていくのは予想できているはずだし、Aパスが返らないときの対策ももちろん考えているだろう。日本だけが新しいボールで戦っているわけではない。

相手の強いサーブへどう対応していくかはもちろん、全日本チームで唯一のジャンプサーブの使い手である長内選手のサーブにも目が離せない。

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格段にあがったブロック力

とはいえ、この2戦いい面もたくさんあった。
佐藤選手の配球のバリエーションが増えたことに加え、バックアタックの本数が増えただけではなく、バックアタックを打たせるスロットの位置も意識して変えていた。

さらに、元々国内屈指のブロッカーである荒木選手、奥村選手はもちろん、古賀選手のブロック力が更にあがったようにも見える。

新鍋理沙選手と奥村麻依選手のブロック

出典:FIVB

ドミニカはトスが低い上にネットに近く、日本のブロックにかかりやすい状態ではあったが、数字だけ見ても荒木選手がブロックワンタッチ19本シャットが4本、古賀選手が12本中1本、ロシア戦では奥村選手が20本(!!!)中2本、荒木選手が14本中1本。

得点にはならなくとも、日本のコートに直接叩き込まれる場面は圧倒的に少なくなった。

ドミニカ戦に至っては、もう荒木選手の前からじゃボールは通らないんじゃないかと感じてしまうぐらいだった。さすが。

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石川真佑選手は日本に新しい風穴をあけられるか

そして今回、大会のシンデレラと注目されている石川真佑選手。
石川真佑選手にとって、今回のロシア戦は8月23日に行われたアジア選手権の2次リーグ「対中国戦」以来、恐らく2度目の敗北となった。

兄の石川祐希選手が認める程の負けず嫌いだという石川選手は相当悔しいに違いない。

U20やアジア選手権で優勝した“Bチーム”は、パスのテンポをずらしてでも、ゆっくりと丁寧にパスを返し、4人のスパイカー(曽我選手が後衛のときはさらに)がファーストテンポで“しっかり”と助走に入り、山田選手の“ブロックされないクイック”(バレーペディア参照)などの同時多発位置差攻撃(シンクロ攻撃)をしかけるという、現在のシニア代表とは真逆のコンセプトのバレーをしていた。

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出典:FIVB

ロシア戦では、まだ中田JAPANに染まっていない石川選手が、チャンスボールやパスをBチームのときのように意図的に高く返球している場面が見られた。

また、佐藤選手から石川選手へのセットアップも他の選手より高く、ネットから離してセットアップしていた。トスが低く打ち切れなかった場面では、石川選手自身、トスを「高く!高く!」と佐藤選手に要求しているようにも見えた。(「高く!高く!」ではなく「低く!早く!」じゃないことを祈るばかり)

これから対戦するチームのアナリストたちは、改めてアジア選手権やU20での石川選手の活躍を分析し、対策を練ってくるだろう。

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しかし、U20、アジア選手権でも石川対策は練られていたはずだが、それを打ち破ってきたのが石川選手。(Bチームの他のメンバーの活躍ももちろんあるが)決して「思い切りやってるだけ」ではないので念の為。

チームのコンセプトを覆すことはないとは思うが、石川選手が今のシニア代表に何かよい風穴をあけてくれるのをどうしても期待してしまう。また、石川選手の照準は東京五輪ではなく、パリ五輪なのかもしれないが、今のうちに「こうしよう」と言える選手になって欲しい。

いや、言っちゃえ。

中田JAPANの進化はいかに

とはいえ、まだワールドカップも始まったばかり。

東京五輪に向けて強いサーブへの対策、BパスCパスからの攻撃のバリエーション、その他まだまだ課題は山積みだが、たった2戦で今までやってきたことを全て出し尽くしたわけではないはずだ。

今回、緊急招集された石川選手や長内選手の他に芥川選手など今夏活躍した新しい選手も控えている。

横浜大会や札幌大会、大阪大会はチケットも完売した程たくさんの声援を受けて戦うことになる。
日本のバレーボールファンのためにも、課題をクリアし、これからの火の鳥NIPPONの戦いに期待しよう。

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